こんにちは。
機構設計課のDです。
近頃、寒さがひとしお身にしみる頃となりました。
体調を崩しやすい気候となりましたが、スタッフ一同、寒さに負けず日々頑張っております。
私が所属している、機構設計部では電子モジュールの内部レイアウト・筐体・ブスバー
また、電子モジュール組立治具・評価冶具の設計を行っています。
力学・電気・加工・材料と勉強する事柄が多く、培った知識をなかなか体系づけることが出来ずにおる今日この頃です。
せっかくこうしてブログを書く機会を頂いたので、この場をお借りして培った知識をまとめていきたいと思います。
さっそくですが、今回は電子機器に欠かせない銅材料について書いていこうと思います。
まず、銅の特性について
銅は他の金属に比べ優れた特性を持っています。
最たるものといえば、導電性、熱伝導の良さがあげられます。
銅は銀に次いで高い導電性・熱伝導性を持っています。
(銅の電気抵抗率:16.8 nΩ·m 銅の熱伝導率:403 W/m·K)
導電率に関しては、金属材料導電率のIACS(international annealed copper standard)という基準単位になっています。
焼鈍標準軟銅(体積抵抗率: 1.7241×10-2μΩm)の導電率を、100%IACSとして規定されています。
IACSで導電率が高い金属を表すと、銀が108%IACS、アルミニウムが約60%IACS程度と表示されるわけですね。
加工性については、圧延や押し出しなどの塑性加工がしやすく、展延性に優れた代表金属です。
ただし、純銅は非常に柔らかく切削性が悪いです。熱が必要な加工には注意も必要です。熱伝導性が高いため、加工する際に反り・変形が起こりやすいです。
ばね特性も優れており、ベリリウム銅やりん青銅などの疲労強度の高い銅合金が活用されています。スイッチ、リレー、コネクター、リードフレームなどの電子部材に生かされています。
次に、銅合金の規格について
銅や銅合金番号はJIS規格上、アルファベットのCと四桁の数字で表します。
C1020(無酸素銅)などですね。
1000番台は純銅もしくは銅を多く含む合金類で、C17~のベリリウム銅やC19~のチタン銅なども含みます
2000番台は黄銅や丹銅のような銅とCu-Zn系の銅合金
3000番台は加工性をあげるためにPbを添加した快削黄銅
4000番台はCu-Zn系にSn(錫)を添加したネーバル黄銅
5000番台はりん青銅(Cu-Sn-P合金)
6000番台はアルミ青銅もしくは楽器弁用黄銅、高力黄銅
7000番台は洋白や白銅(Cu-Ni系合金)
といった種類があります
最後に純銅材料について
導電率や熱伝導の面で優れた特性を示す純銅(C1000番台)は電子モジュールでも使用頻度が多い材料です。
純銅はCu純度が99.9%以上の電気銅をベースにした材料です。この電気銅を溶かして鋳造、加工を行うことで伸銅品になりますが、溶解の方法によって、少しずつ違った下記3種類に分類されます。
・タフピッチ銅(C1100)
電気銅を溶解するとき銅の中に酸素を0.02~0.05パーセント残した精製銅です。
タフピッチ(Tough-Pitch:硬い松やに)という言葉通り、赤松の丸太を溶けた銅に放り込んで、松やにから発生する水素、一酸化炭素、メタンなどにより、酸化銅を還元させる方法をとっていたことからタフピッチ銅と呼ぶそうです。
導電性を害する微量な不純物を酸素が無害な形にするため、導電性に非常に優れています。
しかし、タフピッチ銅はこの酸素のために、還元雰囲気中で高温に加熱すると、銅中の酸化銅が還元され水蒸気を生じ、この圧力で銅の中に細かい亀裂が生じて脆くなってしまいます。
これを水素ぜい性といいます。
そのため、還元性の雰囲気中で高温に加熱したり、溶接したりするものには適しません。
・リン脱酸銅(C1201、C1220)
銅中の酸素をリンを用いて除いたもので酸素は0.01%以下となり、かわりに微量のりんが残留します。
この残留するリンは導電率を85%前後に低下させるため、高い伝導性を必要とする場合には適しません。
・無酸素銅(C1020、C1011)
無酸素銅とは酸素も脱酸材も含まない銅のことです。
これは真空中または還元雰囲気で溶解鋳造を行うので純度の高い原料と高度な設備、技術を必要とします。銅の含有率は99.96%以上で、その性質はタフピッチ銅とリン脱酸銅の長所を合わせ持ち、導電率は高く、水素ぜい性もないため、主に電子機器に使用されます。
純銅の機械的強度はそのままの状態ではあまり強くありませんが、加工による力を加えることで加工硬化をおこします。加工効果後の硬さ分類を、JISの質別記号で1/2H、1/4Hなどと表します。
Hが最も硬く、3/4H、1/2H、1/4Hの順に柔らかくなります。
今回は詳しく触れませんでしたが、銅合金も奥が深く、
新しい合金も開発されています。
技術の移り変わりもしっかり学んでいきたいですね。
以上、機構設計課よりお送りしました。